7号自選句



子供嫌い
          肩甲

作りましょうまず国旗から虹の春

車はカー馬鹿は馬鹿なり戀は春

車のキーなくして五人春の海

春雷の成る程怖い君であり

逃げだした馬のはなしや春の闇

自転車抱え登る階段春の虹

演歌歌手の銅像立ちて鳥曇

赤ん坊と目があう午後の風信子

口に紙くわえて居れば春の風

雲の峰中古車売場の旗千本

青嵐誘拐犯人のモシモシ

図書館に本多過ぎてさみだるる

白玉や子供は空を飛べません

昼寝してなんだか動く紙コップ

向日葵畑ひそむ子供のその数千

恐ろしき自分の顔や五月闇

梅雨晴の標語の多き道である

蛇を飼い蛇もてあます少女かな

夏服で楽譜めくってあげる役

南風や傷つきやすい人は嫌い

海市
          木内達朗

海市立つ中に銀行ありにけり

咲き満ちて枝痺れをる桜かな

満開の花より低きもの昏し

ひともとのさくらが深き夕かな

花見ればしづかにつもる話かな

ちるさくら触れて硝子に温度なし

喧騒の中を明日へちるさくら

曇天に青みてさくら散り果てし

君だけが素裸になる花曇

春泥を来て虹色に油浮く

春の燈住みたき闇のありにけり

赤鯊と青鯊を釣る朧かな

泣きはらす足ひれはずす走り出す

眦を飛魚掠む航路かな

水底にハートの穴や桜桃忌

炎天を来て看板に突き当たる

かき鳴らす大魚の骨の旱かな

南北にせみのぬけがら裂けてゐし

初潮や壷のごとくに蛭木立つ

蟷螂の来て万力に留まるな



黒揚羽
          喜蔵

ボサ・ノバの午後捩花に蟻のぼる

見合い膳椀に蓴菜残りたり

八朔に正装するを人知らず

裏葉草ざうと波打つ峠かな

枝豆の鞘いつまでも手放せず

涼風は黒き揚羽を何処へか

熊本にて
炎天や狭軌の電車はチンと鳴く

汗ぬぐい蚊を追う我と天守閣

樹も山も雲もむくむく走れ子よ

火の国は大きな匙で氷食ふ

ひともじのぐるぐる求め道迷い

馬刺し食ふ熊襲の末裔(すえ)に大西日

空蝉をつける銀杏の肌ぬくき

夏闇にカメオの横顔沈みけり

成趣園鷺はまつすぐ歩みゆく

涼風や鯉の艦隊遠ざかる

行き先は銀水とやら夏列車

夏休み一歩一歩と崩れゆく

目を細む薄野原の馬油売り

朔の月背中合せの初秋かな

マラソン選手
          寺澤一雄

飯食へば残飯のでる秋の虹

秋風に転がされては玉になる

鯔跳ねるマラソン選手の目の前で

捕まつて水族館で暮らしけり

大陸横断鉄道街通るとき汽笛かな

狼と付く魚の顔どれも似し

春暑しベンチは崩れつつありぬ

中国に北京原人春惜しむ

六月や電気鰻は口引き締める

始祖鳥を一羽と数へ雲の峰

六月の颱風過ぎて猫の耳

死ぬまでに椅子幾つある青葉風

息をしてにほひを嗅いで鼻の穴

物売りのアイス最中を食ひながら

起伏ある畑一丁歩夏大根

梅雨出水家に凭れて家残る

ゆつくりとうつぼは呼吸してをりぬ

大雷雨マダガスカルの魚ならば

プロペラの回り始めは羽根見える

野分晴鰐に噛みつく亀泳ぐ



じやんけんの石
          亀山鯖男

つるつるの空気こしらへ卒業す

おいはひにまだらもやうのチューリップ

ふらここや素顔一枚落としても

花時の羊の風邪を貰ひけり

春暮かな結界にまみづ流されて

夢の世に小骨のかをる立夏なり

十三駅前蛇口乱立子供の日

貝寄風や浜寺駅前ねぢりんぼう

記憶めくかな人形の体温くらべ

下腹部に縞々見ゆる小暑かな

梅雨明けの話し始めに舌噛みぬ

端居せり耳のかたちのみやこにて

水漏るる器に受くる眼のやまひ

輪郭に沿うてドーナツ食ふ冷夏

夏風邪をひき鏡文字書き始む

弔ひやじやんけんの石三つ出す

腹話術人形大発達半夏生

耳ありしところにありし鯨かな

くるひざき皿に盛りたる塩こせう

世界線たどつて父の墓参り

暑くてたまらん
          野晒

店先で傘売る八百屋梅雨に入る

土用入り一升瓶の水を飲む

暑き朝ラジオの声の響くのみ

大暑には対処しようもなかりけり

ブレーカー落ちて一日酷暑なり

夕凪の海岸果てを知らぬなり

ベトナムに行きたい

海豹の形をしたり竹婦人

青簾午睡の我のまだらかな

曝書しつ爆睡をせり昼下がり

五分刈りにしようと思った日の盛り

片陰の上にクレーンの吊り下がる

暑くてたまらん俳句を作る

夏服を着て土手の上散歩する

素麺の色つきを選る童かな

冷や奴選句の筆の止まるなり

冷やし酒日暮れにはまだ遠きかな

鶏の屋根に登りて夏の空

ろくろ首伸びきっており油照り

夏野には座敷童が佇みぬ



春江
          古谷空色

阪神淡路大震災無季一句
靴あまた地震の都に燃えにけり

春燈や浜へ降りたる人の声

多摩川七句
相模より雲の流るる茅花かな

水匂ふなりすかんぽの芽の赤に

花なづな轍に沿ひて歩きけり

春草や遠くの人へ犬走る

春祭朱色の浮子流しけり

鳥去りし方を見飽かず春の川

しんしんと川の音せり夕櫻

櫻の実水筒画架に懸けにけり

横たはる蜂の巣虚ろ顏上げよ

緑蔭の鎮痛剤の小瓶かな

大蜘蛛の脚の濡れをる武蔵かな

玻璃窓の気泡晩夏となりにけり

毬栗のあをあをと吾堕落かな

うつされて猫の欠伸や曼珠沙華

社会主義国家や檸檬刃を入れて

褒めてゐる才能ひとつ扇置く

学問や砂冷やかに足の裏

天高し走者の息に乱れなし

たばこ
          木綿

吊橋の薄衣のひと抱き初めぬ

晩春の意外と燃えぬ母の文

売り人も古ぼけてゐて蚤の市

新約聖書開く音せり虎が雨

妹の笑みたる過日パナマ帽

西へゆくメンソールたばこのあとアイス

君子蘭みどり色のシャツ似合ふひと

油虫とぶや夏休みの宿題

洗濯ネット浅漬胡瓜夏の空

竜の髭まつすぐの線ひきにけり

走り幅跳びして左頬だけ日焼け

水打つや自転車の倒れてをりぬ

微睡みに蝶とががんぼの群れ

午前二時壁画に銀の蜥蜴ゐて

鬱期して午前二時のほつとけえき

夢の中会ふ合ふ逢ふ遭ふうど和へる

夏宵に関節はづす音したり

天瓜粉吾の営業嫌ひかな

日盛や腿に挟める手のぬくき

みどりとたばこのにほひする恋のひと



這いまわる
          蓮菩

牛繋がれていさうな赤い椿かな

いぢめたりしない春には背がのびる

張り付いてすぐに剥がれる春である

花散るやしりとりの「え」は折れしまま

ふるふるとゼリーふるへてイースター

裏側へまわりこんだら藤の花

藤の花棚から落ちてしまひけり

1キロも続く藤棚見に行かむ

撫子や着物も帯も軽くなる

初夏とそう言い切つて地下鉄に乗る

菖蒲湯のくたくたと葉を噛ぢりたる

紫陽花やぐつたりと身を投げ出せり

焦げ付いた紫陽花アクセルぎゆつと踏む

県民の日にしかたなく海へ行く

庭先の蘇鉄は蟻に喰われたり

炎天や蟻の行列眺め居る

部屋中に無数の蟻が這いまわる

蟻コロリ買ひに行きたし暇は無し

ふと見れば西友夏の大バーゲン

ベトナムの西瓜はなべて笑いをり

ベトナム行
          北野勇作

滑走路夏の夜風にオリオン座

花市にバイクあふれてグエンフエ

夕立で冷まして食べるホーチミン

熱き地できしめんみたいなものを食う

とげとげの桃色瓜や氷菓子

安宿の裏の迷路や西瓜売り

大晦日走るバイクは五人乗り

旧正月の市場歩き易きかな

露地裏のプリンは氷をかけて食う

大阪で生まれた女ベトナム人

月満ちて南の島で蚊帳を吊る

外国の井戸夏休みの匂い

船着き場豚には豚のケースあり

ハンモック家鴨の群の上に吊り

椰子の実や白い砂には白い蟹

砂浜に眠る女や蟹の穴

身体中だんだらになるマッサージ

赤土の道バスぼったくり港町

蟹のパン入れたリュックで青い船

夕涼み船の形をした市場



空豆
          植松大雄

空豆や明日のことや夏のこと

夏隣り朝には上がる雨の音

草笛や不肖の息子ここにあり

重信忌蝉より短く氷鳴る

致死量の採血終えし薮蚊かな

打ちし蚊の早くも蟻に曳かれけり

光る風詰まりし高原レタスかな

Dance withKoutei-penguin,Zookeeper!

窪みなき冷やし中華の高さかな

蝉鳴いてランカシャイヤに穴四千

額より広き耳立て夏仔来る

頬骨の凛々しき夏の乙女かな

炎天や自転車抜き去る雲の影

夕立やゲラの煙草の匂い失せ

人魚という人魚殺して船の旅

六百の象の眼を診て休暇果つ

齢経し象の涼しき義眼かな

象眼の忌日直せば秋うらら

夜の秋影絵のきつねも少しずる

先月の占いを読む秋日和

綱渡り
          金田孝子
 
綱渡りしてきて春の村を出る

白木蓮それは妄想かもしれず

片栗の花は戦を知りをるか

我が声のまぬけな響き春の水

一八や頬弛ませて眠る犬

アネモネや神話のやうな祖母の恋

暖かや息継ぐたびに音あふれ

六月の鬼門や誰と誰くぐる

日本の夏の何処に君のゐて

食卓を磨きて暑中見舞かな

夏の夜の汽車置かれある映画館

高層に老女住みけり雪解富士

ちぐはぐな会話途切れて青林檎

扇風機ブラジルランチをふたつ

蛍籠酔ふため飲めど夜の端

荒磯の名も無き岩や夏の夕

冷蔵庫開けて海ある波の音

貝殻と思ひし貝の動き出す

磯蟹と夜の星見る浮世かな

空蝉や永遠に我泳ぎたし


単線
         村井康司

はるうれひありて相模の単線や

夕東風に道の広さを悲しめり

お白酒飲みてくぢ運悪きかな

思考してたちまち日向くさくなる

死の話 すこし遅れて百千鳥

鳴きもせぬヒトのつがひや蜆汁

官能よ二回に分けてかむ洟よ

春燈下なかよきことのおそろしき

文芸やねざめのよだれ拭きて立つ

太陽の欠けたる朝のスープかな

たんぽぽや地球岬の風力は

海晴れて友の悪意に翳なし

春光や股のみならず樹は黒し

打ちすゑて武蔵の春や不精独楽
  
一日に二度食ふ春のとろゝかな

階段に坐してお尻といふことば

満開の桜の下の正座かな

津波見に行きて干潟を見て帰る

生卵呑みて日永の霊となる

ことごとく割れて昭和の硝子かな

鬼のような鬼
          手嶋崖元

赤鬼と青鬼の子紫の鬼

水澄むやああああああああああああ

名月やさゆりてふ鬼探しをり

べらべらの鬼裏返す秋時雨

刑罰のそろそろ水の時間かな

お化粧は魔法の道具文化の日

キッコーマン薔薇火中なり醤油なり

秋桜胸毛によべの匂ひかな

不知火の退くに似る鬼の美少女

鬼さんは悲しいメロン思ふかな

鬼の心のゆらゆらしている粘ついたプール

マロニエの鬼めがけるやメルトダウン

セロファンのすさまじ光折れるかな

強姦と和姦の切れ目鰯雲

雨の月どんどん丸ひもの作る

麗しの鬼秋風の吹かるるや

初雪の富士や金棒冷えてをり

漏電のきらめく桃のかたちして

カンカンカンのカンナ集めるパン好きの鬼

鬼の句の変な片仮名花野かな




          鉄村明美

井戸水を二回汲む夢夏めきぬ

かんたんな計算をせりさくらんぼ

利き腕の不器用である薄暑かな

膝に置く黄色い籠や麦の秋

腕時計発光するや梅雨に入る

手に乗らぬ鳥の重さやさみだるゝ

短夜の真上を向いた顔痛し

水無月の明るい石を拾ひけり

地球儀の映る空なり半夏生

階段の上から素足見てゐたり

夏服やノートに万年筆はさむ

日盛りや卵の殻を剥いてをり

自転車の下れぬ坂や瓜の花

昼過ぎに鎖降ろすや青嵐

夕虹やコーヒーの粉こぼしたる

海彦と山彦である油虫

右頬に風を送るや茄子の花

夕暮の金魚すくひは波であり

涼しさや真珠の色の箱捨てる

夏深し隣りの円の中に入る

天球の罅
          佐怒賀正美

鳥風や潟湖にめぐる仁王の眼

肉感を削ぎたる野火の走りけり

ひんやりと意志もたげたる海市かな

骨格にはためくヨブの意志や春

伸ばしたる巨石の脚や百千鳥

巨魚の骨突き立つ宙や雲雀散る

大岩を昇る亀裂や蝶あふるる

てっぺんのうすく剥がれる春の岩

ヘール・ポップ彗星吊りて春惜しむ

彗星や箱なりの首そして身体

鳥雲に入り聖母より白き岩

彗星やたてがみ欲しき河馬の王

天球の罅やバイソンの口やさし

獣剥がれ罅のはしるや春の天

頭蓋骨は大水晶やスピカ輝る

鳥人間ジャガー人間くいこむ春 

黄金仮面の目と口抜けて春銀河

ゆく春やマンモスの牙にマンモス

かげろふや塔の高さまで振り子

春の富士大老人と廻りけり



大猿吠ゆ
          川上弘美    

日時計を鳩あるくなり春眠し

頬杖にラヂオ聞きたるおぼろかな

いたみやすきものよ春の目玉とは

人待ちて椅子の背固し春燈

水槽にうなぎ生かせる桜かな

少年の空切る拳や鳥曇

みみもとに羽虫かそけき落花かな

運河ゆく舟に花嫁柳絮とぶ

てのひらにのせるうみたてたまご初夏

夏草の下に眠れる猫・金魚

エナメルの眼の男ゐて驟雨かな

占ひのどれも不調やアマリリス

夏よもぎ帽子を海に放りたり

拾ひ来し貝ポケツトに青時雨

大猿の吠えかかりたる日傘かな

マネキンの首置く床屋百日紅

守宮二匹校舎の壁にはりつきぬ

五月雨やゆがみてあをきラムネ玉

卯の花腐し南より魚流れつく

霧吹に虹立ちにけり夏柳

久我山から
          遠藤治

秋隣またこの駅で降りにけり

片陰の犬の瞳のうるみかな

夏帽子あの娘どこの娘星の人

ファイトオと茶髪ら駆ける日の盛り

百日紅偽装農民非國民

楽聖のかほで上水沿ひを行く

蚊柱を慣性力で突破せり

立葵この世の果てを糊で貼る

炎天やロン・カーターに蝉とまる

トニー逝く嵐の後の水鏡

さういへば日傘の似合ふ緋鯉かな

青蔦の塔となりけり杉桜

昼顔やしづかに尖る贋乳房

つくつくと球音のほかは何もなし

黒髪や西日の底の手風琴

白熊の如き犬吠ゆ橋の上

永久歯いま生えそむる夜涼かな

豊年や初めてきみと手をつなぐ

新聞が古新聞となる夜長

ラケットで布団を叩く秋麗



きうりもみ
          東 李桃

あなたにも津波がくるわしやぼん玉

人におされおされおされて春の海

さんぐわつや猫目を開きまた閉ぢる

山笑ふ一年生のお留守番

たんぽぽの小さき束や二年生

綿棒やきつとさびしい春の月

馬の歯のつやめく春やWELCOME

レントゲン技師訪れる春の部屋

曇天や春告魚の産卵す

ももいろのふうせん伯母の家出かな

盲人用オセロのうづや歌舞伎町

春昼の鋸の歯や人を恋ふ

真昼間の矢野さんに会ふ蜃気楼

理科室にチェロ置かれゐし春の果

あぢさゐや始発電車のうすいゆめ

ダアリヤと真昼の無言電話かな

あまがへる質問のある顔なりき

胡瓜もみの香に少しづつ泣きました

みづすましお願ひだからつかまへて

大納言さまのゆびさき夏深し

蟹座
          優璃

直下型地震を待てば年の暮

海溝のベントの縁の白日夢

宇宙船落下地点は花畠

雲海で迷っていたらここに出た

我が肺の蟹うごきだす暗夜かな

初夏や野菜ゼリイに星ありて

かうもりがふるはせてゐる空の藍

夏めきて非常に仲良きふたりかな

ふたむかし前の歌だぜ葱坊主

彗星やドはシを追ひて逝きにけり

燎原に隕石堕ちてまひるかな

台風過マグリットの空ビルの壁

原色の帯に諭吉を挟みけり

さらけ出す脛なめらかな旅芸人

するめいか頬張る婆の缶コーヒー

演芸場ぬるきビールの似合ひたる

江戸川の生き腐れてや夜を濡らす

仰向けに壊れて蝉の鳴き止まず

通勤や日毎に黒くなるバナナ

書き終へて世界の果は驟雨かな



同調 
          田辺一教

競艇を終えておひとつ氷頭膾

真夏には積み荷のかぼちゃ取り落とす

半分に割って塩塗る胡瓜かな

好きな子と隣り合わせの夏休み

ひと足でまたげぬドブの夏の草

細胞を防ぎきれない九年の夜

今刈った髪吸い込まれ体育の日

はみ出すもはみ出すもなおコスモスよ

街中へ伸び行く線路孤高なり

五台目の自転車叩くすすきかな

稲架残る歩道を薬買いに行く

次の日は魚買い行けば稲架はなし

電柱を覆いし蔦も枯れ始む

富有柿ぺちゃと潰れて青い空

林檎持ちただ座している石の中

俺日本人に生まれて秋祭

風強く月下にコック歩きおり

撒水の流れて集う赤とんぼ

熟柿より旧家の娘出にけり

年の瀬に恋す万代橋渡る

エンジンとニンジン
          
一鮪

森に入るために出る森雪を踏む

着ぶくれて殿の純真おもひけり

春野にはオムレツのちから増して群

屋外の赤い記号とシヤボン玉

たんぽぽがのけ者の背にびつしりと

朧夜の句点の如く座してゐる

温水無礼な死はひらひらと 坂

夕凪や迷子を連れて帰つたよ

擬態して塗り分けるふうせん玉多し

片蔭にあのエンジンこのニンジン

裏切りや夏ストローの曲がりかた

夏の月滝田栄の林立す

帰省して樹の夢をみるひだりめが

夏果てて置き去りの傘集まりぬ

蛍狩名無し男に名づけし名

夏果つる書割をんなの横顔に

鳥威消えてさびしい九人目

かげろふのあはひも青く塗れず紐

屋根裏のりんごのゆめや第二幕

残る虫記憶に照らし出されし夜







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